エレキギターを始めようと決めたのに、いざ買う段階になって手が止まってしまう。そんな経験はありませんか。
ネットで検索すれば「初心者おすすめ」と書かれたギターが山ほど出てきます。でも、値段はバラバラ、口コミも人によって正反対。安いものは「すぐ弾かなくなる」と言われ、かといって高いものは「初心者が手を出すには…」とためらう。結局どれを選べばいいのか分からず、カートに入れては消して、を繰り返している。
もしあなたが今そんな状態なら、この記事は役に立つはずです。
ここでは特定の商品をいきなり勧めることはしません。まずは「なぜ初心者のギター選びはこんなに難しいのか」という原因を一緒にほどいていきます。原因が分かれば、選ぶべき基準が見えてきます。その基準に照らしたとき、一つの選択肢として名前が挙がるギターがあるので、記事の後半で紹介します。
こんな悩み、ありませんか
最初に、ギターを始めようとしている人がつまずきやすいポイントを並べてみます。おそらく、いくつかは心当たりがあるのではないでしょうか。
まず「安物買いの銭失いが怖い」という悩み。数千円で買える激安ギターもありますが、「音がひどい」「すぐ壊れた」というレビューを見ると手を出しづらい。かといって、続くかどうかも分からない趣味に何万円もかけるのは勇気がいる。この「安すぎず高すぎず」の線引きが、そもそも分からないわけです。
次に「弾けるようになる前に挫折しそう」という不安。ギターは最初の数ヶ月、指が痛くて音もまともに出ない時期があります。ここで多くの人がやめてしまう。だからこそ、その「一番しんどい時期」を少しでも楽にしてくれる楽器を選びたい。でも、店頭で少し触っただけでは、それが自分に合うのか判断できません。
そして意外と多いのが「どんな音楽をやりたいか、まだ決まっていない」という悩み。ロックをやるのか、弾き語りっぽいことをするのか、それすら曖昧なのに「このギターはこのジャンル向け」と言われても選びようがない。方向性が定まっていない段階での楽器選びは、想像以上に難しいのです。
これらの悩みに共通しているのは、「失敗したくない」という気持ちです。お金の失敗も、挫折という失敗も、どちらも避けたい。この気持ち自体はまったく正しいものです。
なぜ、その悩みが生まれてしまうのか
では、なぜこれほど選ぶのが難しくなるのでしょうか。原因は大きく三つあると考えています。
一つ目は、情報が「作り手目線」で書かれすぎていること。楽器の紹介ページやカタログは、木材の種類やピックアップの構成といった専門用語で埋め尽くされています。これらは確かに大事な情報なのですが、初めての人にとっては暗号のようなもの。「アルダー材」と言われても、それが自分の練習にどう関係するのか、まったくピンとこない。情報はあふれているのに、自分の悩みに答えてくれる情報が見つからない。この状態が迷いを生みます。
二つ目は、初心者が本当につまずくポイントと、レビューで語られるポイントがズレていること。上手な人のレビューは「音の抜けが」「サステインが」といった、演奏に慣れた人ならではの視点で書かれがちです。でも本当の初心者が最初に直面するのは、もっと手前の問題です。「弦を押さえると指が痛い」「コードを押さえても音が鳴らない」「そもそもチューニングって何」。この地面すれすれの悩みに寄り添った情報は、実はあまり多くありません。
三つ目は、「最初の1本」に求められる役割が特殊だという点です。プロが選ぶギターは、良い音を追求するための道具です。でも初心者の1本目に必要なのは、良い音である以前に「挫折させないこと」。押さえやすい、疲れにくい、変な癖がなくて基礎が身につく。この「教習車」のような性質は、上級者向けのレビューではなかなか評価されません。評価軸そのものが違うのです。
つまり、悩みが生まれる根本は「あなたが知りたいこと」と「世の中に出回っている情報」がすれ違っているから。ここを埋めるのがこの記事の役目です。
では、どう選べばいいのか
原因が見えてきたので、解決策としての「選び方の基準」を提案します。結論から言うと、初心者の1本目は**「基礎練習を邪魔しないギター」を選ぶ**のが正解です。
なぜなら、最初の半年で身につけるべきは「正しい指の動き」と「弾く習慣」だからです。この時期に弾きにくいギターを使うと、痛みや不便さが練習をやめる理由になってしまう。逆に、素直で扱いやすいギターなら、痛みや不便さという「やめる口実」が減り、続けやすくなります。上達するかどうかは、才能よりも「続けられたかどうか」で決まる部分が大きいのです。
具体的に、次の三つを満たすギターを探すことをおすすめします。
一つ、軽くて体に負担が少ないこと。重いギターは長く構えているだけで疲れ、練習時間が自然と短くなります。気軽に手に取れる軽さは、地味ですが続ける上で効いてきます。
二つ、ネックが握りやすく、弦が押さえやすい状態にできること。指が痛い時期を乗り越えるには、そもそも押さえる力が少なくて済む設計が助けになります。弦と指板の距離(弦高といいます)を低く調整できるかどうかも、ここに関わってきます。
三つ、いろんな音が出せて、やりたい音楽が決まっていなくても対応できること。方向性が定まっていない初心者ほど、一台で幅広い音が出せるギターが向いています。あとから「やっぱりロックがやりたい」となっても買い替えずに済むからです。
この三つの基準を持って探すと、選択肢はかなり絞られます。そして、その条件をバランスよく満たす具体的な一台があります。ここでようやく、商品の話に入ります。
その条件を満たす一台、YAMAHA PACIFICA012
先ほどの三つの基準に照らして、私が「最初の1本」として理にかなっていると考えるのが、ヤマハのPACIFICA012(パシフィカ012)です。ここからは、なぜこのギターが初心者の悩みを解決できるのかを、基準に沿って説明していきます。
まず軽さについて。このモデルは「アガチス」という比較的軽い木材でボディが作られていて、実際に構えてみると取り回しの軽さを感じます。軽いギターは弾いていて疲れにくく、「ちょっと10分だけ触ろう」という気軽さにつながります。この気軽さこそが、練習を習慣にする第一歩です。重いギターだと、ケースから出すのすら億劫になってしまうものですから。
次に弾きやすさ。ネックがやや薄めに作られていて、手の小さい人でも握り込みやすい形状です。加えて、指板の仕上げの精度が高く、弦を低い位置に調整しやすいのも特徴です。弦が低ければ、それだけ弱い力で音が出せる。指が痛くて心が折れそうな最初の時期に、この差は想像以上に大きく効いてきます。トラスロッドという調整用の仕組みが入っていて、付属のレンチでネックの反りを直せるので、長く使ううちに弾きにくくなっても手入れができます。
そして音の幅広さ。このギターには、性格の違う二種類のマイク(ピックアップ)が組み合わせて搭載されています。片方はキラッとした澄んだ音が得意で、もう片方は太くて力強い音が得意。切り替えることで、クリーンな爽やかい音から、歪ませたロックっぽい音まで、一台でかなり幅広くカバーできます。やりたい音楽が決まっていない初心者にとって、これは大きな安心材料です。「まだ方向性が決まってないから、とりあえず何でも出せるやつを」というニーズにぴったりはまります。
ここに、ヤマハというメーカーの背景も重なります。ヤマハはギター専業ではなく、ピアノや管楽器まで幅広く手がける総合楽器メーカーです。その品質管理の丁寧さは入門モデルにも及んでいて、「安いのに作りがしっかりしている」という評価につながっています。低価格帯の楽器は個体差(同じ製品でも品質にばらつきがあること)が心配されがちですが、そこの安心感がある点は、初心者にとって見えない安心料と言えるでしょう。
要するにPACIFICA012は、「軽い・押さえやすい・何でも音が出せる」という初心者の三大ニーズを、手の届く価格で満たしている。だからこそ、最初の1本として名前が挙がり続けているわけです。
こんな人には、よく合う
ここまで読んで「自分に合いそうだ」と感じた人もいれば、まだ迷っている人もいると思います。判断の助けに、向いている人の像をはっきりさせておきます。
これから完全にゼロから始める人には、まず間違いなく合います。弾きやすさに全振りした性格なので、基礎を身につける教習車としては理想的です。
やりたいジャンルがまだ決まっていない人にも向いています。前述の通り一台で音の幅が広いので、興味の対象が途中で変わっても付き合い続けられます。
続くか分からないから、初期投資を抑えたい人にもおすすめできます。「高いギターを買って挫折したら…」という不安を抱えている人にとって、手頃な価格でしっかりした品質というバランスは心強い。仮に途中でやめても後悔が小さく、逆に続けられそうなら、しばらくはこれ一本で十分戦えます。
とにかく手をかけずに、すぐ練習を始めたい人にも。変な癖のない素直な楽器なので、悩まずに練習そのものに集中できます。
逆に、こんな人には向かないかもしれない
正直に、合わないケースも書いておきます。ここを隠すと、買ったあとに「話が違う」となってしまうので。
すでに音にこだわりがある中級者以上の人には、物足りなく感じられる可能性が高いです。あくまで入門用として設計されているので、細かい音色の違いを追求したい段階になると、もっと上のモデルが欲しくなってきます。実際、長く続けていくとパーツを交換したり、上位機種に買い替えたりする人も多いです。
「人と被りたくない」という気持ちが強い人も、少し立ち止まったほうがいいかもしれません。ヤマハの入門機は定番中の定番で、教室やスタジオでもよく見かけます。個性的な一本を持ちたいというこだわりがある人には、その「みんな持ってる感」がマイナスに映ることもあります。
もう一つ、意外な注意点として入手ルートの制約があります。このPACIFICA012というモデルは、実はヤマハと島村楽器が組んで作った特別な位置づけの製品で、基本的に島村楽器(とそのオンラインストア)でしか新品が手に入りません。近所の楽器店でふらっと買う、という買い方はしにくいので、この点は頭に入れておいてください。
ここまで読んで、それでも「自分の目的には合っている」と思えるなら、相性は良いはずです。
買ったあと、最初にやっておきたいこと
見落とされがちですが、ギターは「買って終わり」ではなく「買ってから始まる」道具です。届いたその日に気持ちよく弾き始めるために、最初にやっておきたいことを二つだけ挙げておきます。
一つは**チューニング(音合わせ)**です。届いたばかりのギターは、輸送の間に音がずれているのが普通です。これは不良品ではなく、当たり前のこと。今はスマホの無料アプリで簡単に音を合わせられるので、身構える必要はありません。むしろ、毎日弾く前にチューニングする習慣をつけると、耳も育っていきます。「届いたのに音が変」と焦らず、まずはここから始めてください。
もう一つは、可能なら弾きやすい状態への調整です。弦の高さや細かいセッティングは、購入時のままだと人によって「少し弾きにくい」と感じることがあります。特にこのギターは弦の長さがやや長めの設計なので、押さえる指の間隔も少し広くなります。自分で調整するのが不安なら、購入した楽器店に相談すれば見てもらえることが多いです。最初にここを整えておくだけで、弾きやすさがぐっと変わり、挫折のリスクが下がります。
この「最初のひと手間」を知っているかどうかで、スタートの心地よさが大きく違ってきます。
よくある質問
Q. 本当に初心者でも扱えますか? はい。むしろ初心者のために設計されたようなギターです。軽くて押さえやすいので、最初の壁を越えやすい作りになっています。ただし、届いたらチューニングだけは自分でする必要があります。
Q. 安いギターですが、音は大丈夫ですか? 入門用として十分な音が出ます。プロが求めるレベルとは別の話ですが、練習して上達するぶんには何の問題もありません。むしろこの価格でこの完成度、という点で評価されているモデルです。
Q. どんなジャンルの音楽に向いていますか? 特定のジャンルに縛られません。澄んだ音も、歪ませた力強い音も出せるので、ロック・ポップスなど幅広く対応できます。やりたい音楽が決まっていない人にこそ向いています。
Q. どこで買えますか? このモデルは基本的に島村楽器とそのオンラインストアで扱われています。一般的な楽器店では新品を見かけにくいので、購入先はあらかじめ確認しておくと安心です。
Q. 上達したら買い替えが必要ですか? 必ずしも必要ではありませんが、続けるうちに「もっと良い音が欲しい」と感じたら、そのときが次のギターを考えるタイミングです。最初の一本としての役割は十分に果たしてくれます。
まとめ
初心者のギター選びが難しいのは、あなたの選び方が悪いからではありません。世の中の情報が「作り手目線」や「上級者目線」に偏っていて、本当に知りたいことにたどり着きにくいからです。
大事なのは、最初の1本に「良い音」よりも「挫折させないこと」を求めること。軽くて、押さえやすくて、いろんな音が出せる。この三つを満たすギターを選べば、一番しんどい時期を乗り越えやすくなります。
YAMAHA PACIFICA012は、その条件をバランスよく満たした一台です。もちろん万能ではなく、音にこだわる段階になれば物足りなくなるし、入手ルートにも制約があります。でも「これから始める人が、まず失敗せずにスタートを切る」という目的にはよく合っています。
そして忘れないでほしいのは、ギターは買ってからが本番だということ。チューニングを済ませ、弾きやすく整えて、あとは毎日少しずつ触る。この積み重ねだけが、あなたを上達させてくれます。楽器選びで悩んでいた時間を、これからは練習の時間に変えていってください。

